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監査役インタビュー:中田社外監査役

中田さんは一般株主との利益相反のおそれのない独立役員の要件を満たしている社外監査役です。公認会計士の資格があり、また、自身でも会社経営をしておられるなど、会計・経営に関して高度な見識と経験をお持ちです。 今回は当社の取締役会の実効性などについて伺いました。

− 昨今、当社の取締役メンバーに変更がありました。 中田さんは2017年6月に社外監査役に就任され変更前と変更後両方の体制に関わられましたが、取締役会の運営にどのような違いがあると思いますか?

特に海外子会社の状況については見え易くなりました。 以前は「海外の経営陣に任せている。権限を委譲している。」とのことで、突っ込んだ質問がしにくい状況でした。 現経営陣は要求すれば資料を準備し説明してくれますので、情報共有ができるようになりました。 説明された内容に問題を感じれば、さらに突っ込んだ質問もできます。 その過程で、理解が深まって、判断も適切になっていきます。 つまり、「透明性」「実効性」は格段に高まったと感じています。

−「 海外子会社に権限を委譲する」ことは良くないとお考えでしょうか?

日本の経営陣と十分な信頼関係があり、円滑な意思疎通ができる関係があればそれも良いと思います。 しかし、そのような関係が築けていない状況で「現地に任せる」というのは、「委譲」ではなく「放任」です。 私は公認会計士として、上場企業における海外の不適切会計の事案を見てきました。 不適切会計事案の多くは、本社が海外子会社の経営に責任を持つ意識が乏しいことが原因です。 本社経営陣がグループ全体の経営戦略をしっかり立てて、その経営戦略について現地経営陣の理解と納得を得た上で、現地での経営を行っていただいて、その進捗をしっかりモニタリングしなければ、企業の存続を危うくする事態が発生しても、適時・適切には対応できないと考えています。

− 社外取締役の姿勢はどのように変わりましたか?

以前の社外取締役からは、ビジネスの変化や動向、他社の事例など、マクロ的なお話を多く伺いました。 現在の社外取締役はあえて「嫌われ役」を買って出るように、執行側に相当踏み込んだ指示や指導、問題提起などを行なっています。 これに執行側も、きちんと受け止めていろいろなことが変わりました。 取締役会の議論が相当活性化されたと感じられます。 私もそれに乗っかり、今までは聞きにくかった質問をしたり、厳しい意見が言えたりするようになりました。

− 業績低迷の原因や、当社の課題は何だと思いますか?

業績低迷の最大の原因は、メキシコ工場において先行投資負担や想定外の支出が発生し連結業績を圧迫してきたことです。 また、会計処理についても、課題を感じています。 当社の売上に大きな影響がある自動車ビジネスは、製造設備を購入して売上が上がるまで3、4年かかります。 そのため、工場立上げ当初は、売上もないのに、減価償却費や人件費などが発生します。 数年間は利益が出ないどころか、赤字になりやすいのです。 その上、矢継ぎ早に工場を立ち上げたので、短い期間に多額の減価償却費が発生して、利益を圧迫してきました。 つまり、減価償却費を、売上が発生する年度に対応しない年度で計上する会計処理なのです。 日本の会計制度のルールには準拠しているので、不適切な会計処理ではなく、とても悩ましく感じています。 ただ、売上と立ち上げ費用の計上年度のズレについては、今後、ビジネスの実態に合った会計処理ができる国際会計基準を選択することも検討に値すると思います。
当社の課題についてもうひとつ申しあげると、「予算・計画の精度」があります。 予算や計画の精度を高めることは、経営資源(人・もの・金)を適切に配分して、できるだけ多くの利益を得るために必要です。 この精度が低いと、儲からないことに経営資源をつぎ込んで、儲かることに経営資源が使えない状況になります。 これでは儲かるはずがありません。 今の経営陣になってから、子会社の予算策定会議にも参加できるようになり、予算案に対して厳しい意見が言える状況になってきました。 さらに今後は、意思決定理論や統計的手法を駆使して精度の高い「将来予測」をすることなどを提案していきたいです。

− 当社の特色や、他社とは違う点はどんなところでしょうか?

当社の最大の特色は、世界中に展開するお客様に対して、迅速で柔軟で適切に対応できるよう、グローバルに生産拠点を構築してきたことです。 アグレッシブに活動できるところは、とても良いと思います。 投資計画については取締役会でいろいろ厳しいことを言わせてもらってはいますが、この積極性は変わってほしくないです。 ただ、すでに借入金が多額になっているので、当面、投資は慎重にするべきと考えています。

− 株主の皆様にメッセージをお願いします

業績的には今が一番苦しく、厳しい時期だと思います。 ここを乗り越えれば、メキシコを始めとして、新しい工場の売上も本格的に上がってきて、減価償却費の負担も軽くなってくるので、業績はどんどん良くなっていくと期待しています。 私は社外監査役なので取締役とは役割が違いますが、“企業価値を上げて持続的に成長させる”ことは共通であり、そのことを株主の皆様から託されている立場です。 長期的な観点で、持続的な成長と企業価値の向上に貢献できるよう、透明性の高い取締役会で厳しい発言をしていきたいと考えています。

社外監査役(独立役員) 中田 清穂