本日は当社の経営戦略説明会にご参加くださり、誠にありがとうございます。
代表取締役社長の関口です。
従来まで決算説明会として開催してきましたが、今回より経営戦略説明会へ名称を変更しました。
本日は、2021年度決算および2022年度予想を簡単にご説明した後、新たな中期計画の内容をご紹介したいと思います。
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まず、2021年度の実績と2022年度の予想について、ご説明します。
2021年度は大きな利益を計上することができましたが、その要因は大きく3点あると考えています。
1点目は、2020年度末から2021年度1Qにかけて、白金族金属(PGM)の価格が高騰し、価格の上昇に伴って、解体業者から使用済み自動車触媒の在庫が払い出されました。
それにより、当社が使用済み自動車触媒の集荷量を急速に増やした結果、PGMリサイクル事業が2021年度1Qを中心に大きな利益を計上しました。
2点目は、施策の収益貢献を2021年度に実現できたことです。
例えば、環境・リサイクル部門における不燃性廃棄物の再資源化事業の開始や、電子材料部門における近赤外LED・PDの上市がそれに該当します。
また、持分法投資利益では、2020年初から本格稼働を開始したメキシコのロス・ガトス鉱山が収益に貢献しました。
3点目は、金属加工部門や熱処理部門といった自動車関連の事業が、2020年度下期から急激に回復した需要を確実に捉えられたことです。
これらにより、2021年度については、グループ全体として史上最高益を達成することができました。
セグメント別でも、環境・リサイクル部門、製錬部門は過去最高益となりました。
一方で、2022年度予想については、非常に見通しづらい環境にあると考えており、従来の業績予想に比べると保守的に見積もった点があると率直に考えています。
現時点では、売上高9,000億円、経常利益550億円を予想しており、前年比で増収減益となる見通しです。
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経常利益が減益となる要因を、こちらのページでご説明します。
原料の購入条件については、悪化する見通しです。亜鉛のT/Cについては、2022年の購入条件は前年比で大きく改善しました。しかしながら、在庫を消費する関係から、2022年度上期中は前年度の悪い条件の亜鉛原料の払い出しを行うこととなります。それにより、2022年度の決算に反映される払い出しベースでは、上期はコスト増となり、原料の購入条件の改善効果は、2022年度下期〜2023年度上期にかけて実現する見通しです。
また、電力費、資材費の値上がりを85億円ほどと見積もっています。さきほど、先行きが見通しづらく保守的に見積もった点があると申し上げましたが、85億円のコストアップは足元の実績ではここまではいきません。ただ、この先にエネルギー価格が一本調子で上昇することを想定し、少し過大に見積もりを行っています。今期の年間での見通しの不透明さを表現していると、ご理解いただければと思います。
減価償却費、労務費、研究開発費の増加については、将来の成長に向けた投資の一環と認識していますので、むしろ前向きなコストアップと捉えています。
持分法投資利益については、金属相場に左右される海外鉱山の利益が、足元の相場を踏まえますと、この数字から改善する可能性があります。
もう一つの要因は藤田観光です。同社が先般公表した予想収益をベースとしており、2021年度は同社が行った資産売却による利益がありましたが、2022年度はその要因が剥落することにより減益となる見通しです。
相場影響につきましては、今回の予想では2021年度に比べて、それほど大きな変動はないと予想しておりますが、非常に不透明な状況にあると言えます。
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一方で、当社がターゲットとする市場について、2022年度の需要トレンドをどのようにみているかを本ページと次ページでお示ししています。
一言で言いますと、大きな変調は想定していません。
2021年度に続いて、2022年度も需要面は比較的堅調な市場が継続するという見通しに基づく業績予想となっています。
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中国・上海におけるロックダウンやウクライナ紛争などの世界情勢の変化については、現時点で当社に直接的な影響を与えていません。今後、当社顧客の生産動向に何等かの影響を与える懸念はあるものの、2022年度の業績予想には、その点は織り込んでいません。
電力費、資材費の値上がりなどを過大に見積もったと申し上げましたが、需要面での不安要素を、形を変えてコストに一部織り込んだと、ご理解いただければと思います。
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それでは、ここから前中期計画である「中期計画2020」の振り返りを行います。
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こちらに記載の通り、各事業において「中期計画2020」に盛り込んだ施策は概ね、着実に実施することができました。
主な成果を記載していますが、一部は2021年度に収益貢献までを実現することが出来ました。家電リサイクルの処理量の増加、使用済み触媒の海外サンプリング拠点の立ち上げ、ロス・ガトス亜鉛鉱山の操業開始、近赤外LED・PDの量産開始は、2021年度に収益貢献できた案件となります。これら以外については、どちらかというと、2022年度以降に向けての準備という位置づけです。
このような実績を踏まえ、収益貢献と将来への準備を比較的、順調に進められたというのが「中期計画2020」の成果だと考えています。
数値目標につきましては、相場の上昇が大きく影響しましたが、最終年度の目標は全て達成したという結果となりました。
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「中期計画2020」の振り返りの一つとして、当社の5つの事業ポートフォリオについては、いずれの事業も高い収益力を持っていることが確認できたと考えています。
特に、2020年に新型コロナのパンデミックが発生した際には、上期に自動車関連部品を中心に需要の消失に近い事象が発生しましたが、下期より急速に需要が回復し、それを確実に捉えることができたことは我々にとって自信となりました。
結果から振り返りますと、2020年の新型コロナのパンデミックは、一種のストレステストのような形となり、我々の事業の強みを再認識することができました。結果的に、最も大きな影響のあった熱処理部門についても、2020年度は黒字で終えることが出来ました。
これらの結果が当社にとって大きな自信となったうえで、次の中期計画に向かうことが出来ると考えています。
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これまでのご説明の通り、業績面、財務面は一定の成果が得られたと考えます。ただ、一方で、企業の永続性を確保していくうえでは、より一層、ステークホルダーの皆様からのご要請にきちんとお応えしていく必要があると考えています。実業においてさらに腕を磨くことに加えて、DOWAグループ全体がより健全な企業集団であるということを内外に示すために、サステナビリティに関する課題への対応を強化していくことが、次の中期計画、あるいはその先に向けた課題と認識しています。
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ここからは「中期計画2024」の中身をご説明します。
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まず、2020年11月にDOWAグループのビジョン(2030年のありたい姿)を公表しました。それまで掲げていたものを進化をさせた表現としており、「本業とする資源循環と優れた素材・技術の提供を進化させ、安心な未来づくりに貢献し続ける」、これを2030年のありたい姿と規定しました。
5つの事業部門それぞれが、資源循環と優れた素材・技術の提供という側面から事業を行うことで、グループ全体の強化を図ると同時に、社会への貢献が実現できることを改めて示したものです。
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資源循環、廃棄物処理について、2030年までの事業環境を、機会とリスクに分けて評価を行いました。
一つの事象にはプラス面とマイナス面の双方があります。例えば、「廃棄物の焼却処理ニーズの衰退」に関して言えば、一般的にはそのような潮流にあり、単純な焼却処理のニーズは今後、縮み続けていくことは間違いないと考えています。しかしながら、リサイクルしにくい廃棄物や、そのままでは環境負荷の高い難処理廃棄物を焼却するというニーズは決してなくなりませんし、むしろ、より効果的で安心な焼却処理を追求していけば、焼却処理事業は、まだまだ成長が見込めるビジネスとなりえます。技術開発や設備の更新・改良も含めて、実現に向けた課題は多くありますが、追求し続けることで、当社の環境ビジネスにとっては、決してマイナス面ばかりではないと言えます。
「中期計画2024」の期間内というよりも、さらにその先を見据えて、技術開発や研究開発、設備投資を進めていくための、一つの動機付けにしたいと考えています。
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続いて、電子材料部門、金属加工部門、熱処理部門が対象とする分野です。
これまでも当社が成長市場と位置付けてきた「自動車」「情報通信」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」の分野において、当社が提供する素材、技術・サービスをさらにブラッシュアップしていけば、まだまだ高い成長が見込める有望な市場であることは間違いないと考えています。
世の中のトレンド、お客様からの要望をよく見極めながら、よいモノを作って、各市場で当社の事業を伸ばしていきたい、というのが2つ目の事業環境の見方となります。
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当社グループは、2010年にマテリアリティを制定しておりますが、企業理念やビジョンを見直す中で、当社事業の特性と現在の社会的な要請が何かという両面から、改めて、当社が取り組むべき課題を明確にするための議論を重ねてきました。その議論を踏まえて、今回、9つのテーマを「DOWAグループのマテリアリティ」と位置づけ、「循環型ビジネスモデルの進化」と「サステナビリティ・マネジメントの強化」という両輪を強化することにより、当社グル−プの企業価値を高めていく、という考えを「中期計画2024」のスタート地点として定めました。
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今回定めた9つのテーマの中で、上の4つのテーマは、正に当社の本業そのものだと考えています。それに加えて、企業に求められる普遍的な要請の中で、当社が優先的に取り組むべきものとして定めたものが残る5テーマです。この9つのテーマをいずれも充実させていく、強化していくというのが、中期計画2024の大きな柱となります。
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それでは、「循環型ビジネスモデルの進化」について、ご説明いたします。
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1つ目は大きなテーマである「金属リサイクルの強化」です。
当社のリサイクル製錬所を中心とした、環境ビジネスとリサイクル製錬が組み合わさったビジネスモデルは、極めて特有であり、世界で唯一に近いものと認識しています。
これを、より一層進化させていくことが「中期計画2024」における一つの方向性です。一例として、製錬部門の売上高ベースでのリサイクル原料由来の金属比率という数値目標を置いています。足元、50%強のリサイクル原料由来の金属の売上について、総量を拡大するだけでなく、その比率を上げることを目指していきます。
そのためには、単純に製錬部門を強化するだけでなく、前処理機能を担う環境ビジネスとの“協働”を進めていき、その先にある“融合”も見据えながら、一層の進化を進めていきたいと考えています。
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同時に、単純なリサイクルを行うだけではなく、エネルギー消費をどのように抑えながら、リサイクルを進めるかという点も、もう一つの大きなテーマとなってきています。
2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、当社も取組みを進めていく必要があります。そのための準備段階として、化石燃料使用量の削減、廃棄物のエネルギーソースへの活用、電力原単位の向上といったテーマを掲げて、相当に技術的なハードルの高いテーマばかりではあるものの、前向きに取り組んでいきたいと考えています。
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続いて、成長市場に向けた製品・サービスの拡充です。
各分野において、顧客から要求されている社会的なテーマに応える形で、当社の様々な製品、技術・サービスの充実化を図っていく考えです。
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さきほど申し上げた顧客ニーズに応えるためには、技術面で新たな革新が必要となります。それらへの解決策の一助として、今年の4月に東北大学に共創研究所を設立しました。
東北大学とは2004年に寄附講座を開設し、包括協定を締結するなど、長いお付き合いをさせていただいています。東北大学は当社のベースである資源・素材という分野で優れた知見を有しており、これまでの寄附講座、包括協定の枠組みのなかでも、いくつもの成果を共同であげてきた実績があります。このような背景のもと、今回の共創研究所の設立に至りました。なお、非鉄金属業界では初めての設立となります。
共創研究所では、これまでの限定的な分野での協働から、広く東北大学全般の技術シーズを活用させていただき、カーボンニュートラルやAI、MI、IoTなどの新規技術を当社とともに高めていくことを目的としています。さらに、若手技術者を共創研究所へ派遣し、東北大学の教授や学生のみなさんとの交流を通じた、高度な技術人材の育成にも活用していきたいと考えています。
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続きまして、「サステナビリティ・マネジメントの強化」です。
世の中の先進的な会社から見れば、何をいまさらという内容かもしれません。ただ、当社として、これまでも取り組んできたものを改めて作り直して、より強化しやすいような仕組みを構築したうえで積極的に進めていきたいと考えています。
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2022年3月にサステナビリティ基本方針を公表しております。それを受ける形で2022年4月1日付で、サステナビリティ課題に取り組む組織を発足させました。
取締役会の下に、サステナビリティ推進会議を設け、議長は私が担います。年に2回ないし3回程度の開催とし、サステナビリティに関する重要な方針あるいは施策、計画の進捗状況を議論していく場とします。また、重要な事項については、都度、取締役会に報告をする、という流れを定着させていきたいと考えています。
さらに、サステナビリティ推進会議の下に、それぞれの分野の社内の専門家による、サステナビリティ委員会を設けました。テーマごとに個別課題への施策の検討、進捗状況の確認を毎月行い、各活動を実効性を持った形で推進していきます。
なお、サステナビリティ委員会で検討する各テーマの詳細については、今年の秋に発行します統合報告書(DOWA REPORT)に記載する予定ですので、是非、そちらもご参照ください。
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続いて、リスクマネジメントの強化への取り組みです。
当社はHD制をとっており、その下に5事業会社、2事業サポート会社という体制を敷いています。さらに、事業会社の傘下に生産拠点が事業子会社として、製品・サービスごとに連なっています。このような会社全体の構造に即した形でのリスクマネジメント体制の構築を目指して整備したのが、このⅣ線ディフェンス体制です。
最終的にはHDの取締役会に報告することになりますが、2020年4月に新設しました監査部が独立した立場からのお目付け役としての機能を果たします。管理部隊や営業部隊が所属する事業会社、生産現場が中心となる事業子会社、それぞれに統制を利かせる必要がありますし、それが最終的にグループ全体として統制が取れているかどうかを都度確認する必要があります。
当社の会社の構成に合わせたため、全体として少し複雑な構成となっていますが、実行面で十分機能できる仕組みを作り上げたい、という狙いをもって設計したものです。
2022年6月の株主総会でのご承認を条件として、RSを導入することを先日の取締役会で決議し、公表しました。また、今年の招集通知には、各取締役候補のスキルマトリックスの開示を行います。いずれも昨今、ステークホルダーから開示を求められている項目であり、しっかりと対応していく考えです。
これまでも、リスクマネジメントやガバナンスの強化に取り組んできましたが、今回、体系的に整理しなおして、スムーズに、かつ、外部の方が見ても問題なく管理されていることがわかるような体制を築き、明示していきたいと考えています。
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続いて、気候変動への対応です。
気候変動は当社としても避けて通れない非常に大きなテーマです。2021年8月に気候変動対応方針と長期目標を公表し、2022年2月に、より具体的な2030年の目標を公表しました。これらの確実な実現に向けて、これから色々な活動を積極化していきたいと考えています。
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これからは人に対する投資や教育を充実化させていかないと、企業が存続しづらいことは明白です。そのため、人的資本の充実化も中期計画2024の大きなテーマとして取り組んでいきます。
そのために必要な資金の確保もグループ全体として積極的に取り組んでいきます。
ここにいくつかの施策を挙げていますが、社員に成長機会を積極的かつ効果的に提供していくこと、社員にとって納得感があり・透明性のある処遇を着実に作り上げること、の2点をテーマとして、取り組んでいきたいと考えています。
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ものづくりの変革を基本方針にDXを推進していきます。
中期計画2024の期間については、基幹システムの更新という大きなPJが進行中です。これに加えて、サイバーセキュリティの強化、社内のDX人材の教育・育成を中心にこの3年間の取り組みを進めていきます。基幹システムが完成した暁には、工場でのAI、IoT、MIなどの活用によって、高効率な工場を作り上げることを目指していきます。また、DXを活用したガバナンス面の強化も大きなテーマとして、中期計画2024の期間およびさらにその先に向けて、継続的に取り組んでいきたいと考えます。
これまで注力テーマをご説明しましたが、今回ご紹介したテーマ以外にも数多くのテーマを抱えています。時間の関係もあり、主だったところをご紹介いたしました。
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続いて、経営目標です。
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財務目標については、最終年度である2024年度には2021年度並みの利益とし、様々な指標についても、2021年度に近い水準を継続できるよう、施策効果を積み上げていきたいと考えています。
前提条件については、2021年度に比べると高めの水準に見えますが、一方でエネルギーコスト、資材コストの上昇もあるため、相場の変調とコストアップ要因を合算すると、それほど大きな変化にはならないと考えています。
環境・リサイクル部門は100億を超える経常利益の水準を維持し、製錬部門も300億円を超える経常利益を計画しています。経常利益が特に大きく変化するのは電子材料部門です。いくつかの有望な新規製品の立ち上げにより、過去に何度か挑戦してきた経常利益100億円に再挑戦します。金属加工部門、熱処理部門についても、中期計画2020で掲げた経常利益の目標値に再度挑戦します。
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継続的な成長を目指すためには、成長が期待できる市場への投資や研究開発を積極的に進めていく必要があります。投資については、前中期計画に引き続いて、成長投資の継続を資本政策における大きな方針として掲げていきます。
加えて、グループ全体の持続可能性を高めるための投資となるESG関連の投資を積極的に進めていきたいと考えています。投資の規模感については、後ほどご説明します。
また、欧米含めて金利は上昇局面にきており、日本もいずれ金利の正常化が図られるかと思います。そのときに備えて、投資資金や運転資金を自前で確保することを重要な項目として掲げていきます。
株主還元については、中期計画2024の期間については、配当を基本として、安定的な配当と段階的な増配を目指したいと考えています。安定的な配当は、従前よりお伝えしてきたものであり、これらを基本に据えていきます。
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配当方針です。
2021年度は、普通配当100円と、グラフでは外枠としていますが特別配当30円の計130円の配当とさせていただきました。
中期計画2024の経常利益は、初年度の2022年度が550億円、これは史上2番目の利益水準となりますが、これをボトムとして、年を追うごとに700億円まで経常利益を引き上げるという内容です。この計画を踏まえ、最低でもグラフに示す金額の普通配当を実施したいと考えています。
ここにあえて“以上”と書きましたのは、相場が今後どのように動くのか全く読めない世の中になったことも踏まえ、2021年度のように相場が大きく上振れれば、この配当水準 “以上”を目指すという意味となります。いずれにしましても、安定的な配当を継続し、後戻り(減配)はしない、ということを基本的な配当方針として掲げていきます。
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資金配分、キャッシュ・アローケーションの考え方をお示しします。
本計画では3年間の営業キャッシュ・フローは1,600億円を想定しています。このうち、すでに概要の固まっている投資が1,200億円あります。さらに、内容の詰めはこれからとなりますが、サステナブル課題に対しても積極的に投資を進めるという資本政策のもと、ESG投資に向けた今後3年間の資金枠として200億円を用意しました。残る約200億円が配当という構成となります。
特に、環境・リサイクル部門、製錬部門は、設備を多く抱えていることから、メンテナンスを中心とした投資が多くなる見通しです。電子材料部門、金属加工部門、熱処理部門については、成長に向けた投資を高い水準で継続していきます。
投資1,200億円を用途別に分けると、500億円が成長投資、製錬を中心とした維持更新が370億円、環境保全、安全衛生で130億円、その他200億円という構成です。これをESG関連とそれ以外に分類しますと、ESG関連が230億円という内訳となります。この金額の外枠としてのESG投資200億円を用意しますので、結果、400億円を超える規模のESG関連投資を今後3年間で実施していく計画です。
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グループ全体で拠点数が増加してきていることもあり、中期計画2024期間の設備投資は増加する見通しです。2018年度〜2020年度の設備投資については、製錬部門におけるロス・ガトス鉱山の建設投資が含まれますので、その3年間と比べますと減少する形とはなりますが、引き続き、極めて高い水準の設備投資を行っていきます。
開発研究費については、製錬部門が大きく増加する計画です。この要因は、アラスカにおいて探鉱活動を行う事業への当社出資比率が上昇した結果、連結対象会社となり、探鉱費用が開発研究費に上乗せとなったことによります。なお、将来的に環境、製錬のビジネスを“融合”させて、リサイクルビジネスを進化させる希望を持っていますが、それに関連する具体的な投資は本計画には含まれていません。具体的にどの程度の投資が必要になるかを、この3年間で技術開発を進めながら、見積もっていきたいと考えています。
電子材料部門については、開発研究費を積極的に投入しなければ、将来の技術トレンドに乗り遅れるリスクが高くなりますので、積極的な開発投資を継続する考えです。
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ここからは、セグメント別の具体的な事業戦略をご説明します。
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まず、環境・リサイクル部門です。
事業戦略は従来から延長線上ではありますが、「環境分野におけるアジアのトップランナーとして、顧客満足度の高いソリューションを創出し続け、安心安全な未来の実現に貢献する」としています。「顧客満足度の高いソリューションの創出」という点が、従来から拘ってきた点です。
経営目標については、2024年度に100億円を超える経常利益を目指し、投資も積極的に進める計画です。
主な施策として、当社の強みである廃棄物処理事業では、難処理廃棄物の処理の拡大や、収益化は中期計画2024の先の期間になると思いますが、使用済みリチウムイオン電池処理事業の推進に向けた準備を進めていきます。土壌浄化事業については、解体・破砕・選別という非焼却事業を拡大していくことに加えて、最終処分場の拡張工事を着実に進めていきます。リサイクル事業は、世の中からの期待が大きくなってきていることも踏まえ、様々なリサイクルを拡大していきます。東南アジアは、同地域の経済発展に伴って廃棄物の発生量が増えていく見通しであることから、そのチャンスを確実に獲得していきます。
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このページでは、中期計画2024期間およびその先の期間において実行する施策を具体的な形でお示ししています。
★印がついているものが、今回の中期計画2024において新たに取り組みを開始する項目です。
環境・リサイクル部門は、リサイクル事業を中心に新たな取り組みをスタートさせます。それ以外の事業については、これまでの中期計画での仕込みの収益化が中心となっていきます。
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製錬部門です。
製錬の事業戦略は、「資源循環をさらに強化し、資源の可能性を最大限に引き出す」「サステナブルな製錬事業モデルを構築する」です。
これまでと表現は若干変わりましたが、過去からの流れの延長線上でさらに強化していくという考えです。
金属相場に大きく左右される部門ですが、中期計画2024で想定した前提条件のもと、引き続き、高い利益を期待する部門です。投資はインフラ整備が中心となりますが、比較的高い水準の投資を継続していきます。
主な施策について、貴金属銅事業は、小坂製錬における生産工程の増強を行います。すずはまだ回収余地が残っているため、新しい回収技術・ノウハウの開発、設備の改良などを行い、取こぼしていた有価金属の回収率を上げていきます。PGM事業については、使用済み自動車触媒の発生は今後も増加するため、従来の米国、欧州に加えて、アジアや中南米も含め、世界中で集荷を拡大できる体制を作り、さらに設備増強も行っていきたいと考えています。鉱山開発については、ロス・ガトス鉱山はすでに生産を開始していますので、どちらかと言えば、次に控えている鉱山プロジェクトを進展させることに注力していきます。
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製錬部門も同様に施策の具体的な計画をお示しします。
貴金属銅事業の不純物対応力強化については、試験設備を導入し、小坂製錬において技術的な知見の習得に努めていきます。PGM事業は拡大に向けた様々な取り組みを進めます。それ以外の事業については、これまでの施策のブラッシュアップが中心となります。
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電子材料部門です。利益面では一番大きく変化することを目標に掲げた部門です。
施策については、半導体事業で2021年度に上手くスタートが切れた近赤外LED・PDを、次世代機器向けを含めて、さらに強化していきたいと考えています。電子材料事業は、好調な太陽光パネル向け銀粉が柱となることは間違いありません。加えて、顧客からの引き合いが増えている導電性アトマイズ粉を早期に戦力化させていきたいと考えています。すでに黒字化はしていますが、黒字の拡大を進めていきます。
機能材料事業は、なかなかヒット商品がでてきていませんが、大きな期待感のある製品に燃料電池材料があります。昨今のエネルギーコストの増大が背景となり、アジアや欧州において、定置型の燃料電池向け素材の引き合いが徐々に増えてきています。そのため、燃料電池向け材料を大きな事業の一つとして確立していきたいと考えています。新規開発については、これからもお金と時間は必要となりますが、全固体電池向け電解質粉末の開発を引き続き、進めていきます。
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ここも★印をつけたのが、今回、新たに進めていく施策となります。
近赤外LED・PDについては、現行モデルにはすでに搭載されていますが、次世代向けと位置づけた製品の開発やサンプルワークを行っていきます。
また、次世代の記録材料の開発、量産体制の確立にも取り組みます。サイバーセキュリティの問題に加えて、カーボンニュートラルやCO2の排出削減という観点から、磁気記録テープによるデータストレージの有用性が改めてクローズアップされており、大きなビジネスチャンスになる可能性があります。記憶容量アップという顧客ニーズに確実に応えるためにも、次世代記録材料の開発、量産化を進めていきたいと考えています
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金属加工部門です。
事業戦略は「成長市場(用途、地域)への積極投資を継続し、新たな需要を確実に取り込む」「環境リスクを低減する製品やサービスを提供し、社会に貢献する」です。
自動車、電子部品用途においては、高機能な素材への要請がますます強まってきています。当社の技術力によって差別化が図れる分野であるため、技術力をベースに、新たな市場開拓、製品の開発により、マーケットにおいて優位な地位を確立することに取り組んでいきます。
伸銅品事業では、主力2工場(DOWAメタル、DOWAメタニクス)において、生産におけるボトルネック工程の解消に向けて、積極的な投資を実行してきました。DOWAメタニクスにおける圧延機の更新も2022年度内に完成する予定であり、今後は増強した各設備の能力をいかに有効に使うかという点に成長機会があると考えており、大きなテーマの一つとなります。
めっき事業での、高圧端子向けの新たなめっき品については、当社が独占できる可能性のある分野のため、市場の立ち上がりに追随し、着実に取り込んでいきたいと考えています。
回路基板事業は、足元は、電鉄向けについては、需要の足踏み状態が続いていますが、いずれ回復してくることは間違いなく、カーボンニュートラルの観点からすると、鉄道は再度、大きな意味を持つことになってきます。そのため、これまでと同様に高機能な製品の拡販を行いチャンスをつかんでいきたいと考えています。
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主な施策の詳細です。
伸銅品事業は、中期計画2020で取り組んできた施策の成果を出すことが、大きなテーマとなります。
目新しい施策は少ないですが、めっき事業ではタイにおける新たなめっきラインの構築を進めます。また、国内では増加する新規めっき需要に対応可能な新たなラインを建設するとともに、QCDESの改善を図れるような新しい工場を既存敷地内に建設し、コスト競争力の強化と安全衛生面、環境面、デリバリー面での改善を図っていきます。
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熱処理部門は、自動車業界への依存度が非常に高いということもあり、内燃機関を持つ自動車の生産動向が一番大きな懸念ではあります。
事業戦略は、「カーボンニュートラルを好機と捉え、販売・製造・開発の体質強化に向けた施策を推進する」「伸長する市場(海外・新規)において、着実な成長を実現する」としました。ここでいう、“新規“は自動車以外という意味で使用しています。利益目標についても、高い水準を記録した2021年度を上回る利益を計画しました。
工業炉事業においては、カーボンニュートラルを実現する新たな炉の開発・拡販を行い、中期計画2024の最終年度に同炉を上市するペースでの開発を進めていきたいと考えています。
自動車以外の用途に向けた新規設備の開発・拡販については、すでに具体的な引き合いをいただいているものあり、順次、拡大していきたいと考えています。
熱処理事業は、EV化の進展により自動車1台あたりの熱処理を必要とする部品点数は減少すると言われている一方、自動車の生産台数は増加すると考えています。総じていえば、自動車部品向け熱処理市場が、EV化の進展で大きくシュリンクする可能性は低いと見積もっています。今後、大きな成長は見込めないかもしれませんが、緩やかに成長する市場のなかで、チャンスを取り込んで事業を存続させていくことが、熱処理事業の大きなテーマとなります。特に、中期計画2020期間では、海外拠点の増強・整備を進めてきましたので、今後はこれらの収益化に注力していきます。
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主な施策の詳細です。
引き続き、自動車関連需要への対応が中心となりますが、自動車以外のところでは、バイオマス発電関連設備や、電子材料製造設備については、既に試験販売が始まっています。これらを本格的な軌道に乗せていきたいと考えています。自動車以外という点では、熱処理事業では、国内工場の1つで航空産業向けの品質マネジメントシステムAS9100を昨年取得することが出来ましたので、航空機関連の熱処理サービスをこの3年間で本格的に拡大していきたいと考えています。
海外においては、これまで増強投資を進めてきましたので、各工場のパフォーマンスをあげていくことが中期計画2024期間における大きな課題です。なお、中期計画2020ではインド、メキシコなどにおいて、工場の拡張投資を進めてきましたが、中期計画2024では、新たなエリアへの進出は現在のところ考えていません。市場の動向を見極めながら、必要に応じて適宜判断をしていくことを想定しています。
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中期計画2024の3年間の前提条件は、2022年度予想の前提条件と同じものを使っています。
感応度については、環境・リサイクル部門における副産メタルの販売増加や電子材料部門における銀粉の販売拡大などにより、従来に比べて為替の感応度が増加してきていることが、近年の特徴といえます。
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中期計画2024最終年度の経常利益は、2021年度並みの700億円を計画しています。
コストについては、2022年度の見通しのところでお話したとおり、不確実性が高いことから安全サイドで想定した面もあります。減価償却費、試験研究費については、成長に必要な投資に伴うコスト増のため、前向きなものと捉えています。相場の影響については、ヘッジコストの増加は相場の動きと連動する側面もありますので、合算して見ていただければと思います。その上で、増販効果、施策効果の積み上げにより、利益を上げていく計画です。
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私からのご説明は以上です。ありがとうございました。
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代表取締役社長の関口です。
従来まで決算説明会として開催してきましたが、今回より経営戦略説明会へ名称を変更しました。
本日は、2021年度決算および2022年度予想を簡単にご説明した後、新たな中期計画の内容をご紹介したいと思います。