石橋さんは技術者として、どのような方ですか?
鬼山:石橋は当社を代表する線ばねの技術者で、集中力の凄い有言実行の男です。ただばねを作るだけではなく、お客様のご要望に応えようとする意志とそれをやりきる実行力があります。柴野社長のテーマ「美しい作品の追究」を製品として実現している一人だと思っています。
石橋さんはどのような経緯で入社されたのですか?
石橋:もともと何かを作ることに関しては自分の納得いくものができたことがなく、苦手意識がありました。縁あってアドバネクスに入社することになり、この会社で必要だと思われる人間になろうと決めました。しかし今でも試行錯誤の繰り返しを続けています。
技術者として心がけていることを教えてください
石橋:元来集中力に欠ける性格なので、昔から心がけていることが「切り替えの徹底」です。
一度に多くのことができないので、自ら集中するしかない状況に追い込んでいきます。周りの人から誤解もあるかもしれませんが、そうしなければ自分の納得いく仕事はできません。
今のものづくりへの向き合いかたはいかがですか?
石橋:自分でも素晴らしいと思える製品を作りたいという気持ちがベースにあります。そこにたどり着くためには、周りと同じことをしていてはいけません。普段の行動、生活のすべてが仕事の中でも出てくるので、日常のことを少し丁寧にすることで、結果的に製品の品質の向上にもつながってくると考えています。日常生活においても意識を張り巡らすことにつらいと感じる時もありますが、自分が決めたことは徹底的にやり遂げたいと思っています。
医療機器メーカー様向け留置針用ばねの製造においてのエピソード、苦労した点について教えてください
石橋:留置針とは、採血・点滴をするときに、静脈内に挿入し、留置される医療器具です。まず針のついたチューブを静脈に入れて、その後で針だけ抜き取り、残したチューブを採血・点滴用に使用します。その留置針の針を安全に抜き取る仕組み部分に当社のばねが使われています。この国内シェアは6割あります。図面を初めて見たとき、機械化できるばねの限界を超えており、到底できないと思いました。しかし、営業担当にできると言った手前もあり、寝食を惜しんで試作品作りに没頭した結果、約束を果たすことができました。その後も改良を重ね、完全な製品ができるまでに半年費やしました。
最後に石橋さんにとって「匠の技術者」とはどんな人のことですか?
石橋:「嘘をつかない人」だと思います。
匠とは、一度やると言ったことは絶対やり遂げる、意志の強い人間のことです。