株主・投資家の皆様へ

代表取締役会長兼社長 柴野 恒雄


上期の業績を振り返りましてどのように評価されますか?

 埼玉工場・メキシコ第2工場などへの先行投資のマイナスは計画に入れていましたが、OA機器向けと一時的な医療向けの売上減が想定を超えるなど、非常に厳しい結果となりました。業績予想を下方修正し、株主の皆様には多大なるご心配をお掛けしてしまい申し訳ございませんでした。足元の業績は厳しいですが一方で自動車、医療、インフラ向けなどは将来に向けた取組みは活発で、今後の売上拡大に貢献する引合いを多く獲得しておりますので、期待頂きたく存じます。

自動車分野の状況を教えてください

 日本の自動車の販売台数は頭打ちですが、自動車の電子化に伴い当社が参入できる領域が拡大していること、また、海外市場は新興国・欧米を中心に好調であることから、自動車向けの上期売上は円高の逆風の中、前年同四半期比5%増と好調を維持しており、また来期以降の見通しも明るいです。更に、自動車部品をグローバルで共通化する動きが加速していますので、海外に多くの拠点を持ち、グループ内でサービスや技術ノウハウを移管できる当社には有利な状況になっています。その強みを活かすため、技術面だけではなく営業活動においても日本と海外の連携を強化しています。また、深絞りやインサートモールドは、自動車電子化を背景に特に開発拠点である日本において引合いが急増していますが、今後は海外でも需要が拡大する見込みですので両技術の海外展開を急いでいます。

今後拡大が予想される「自動運転車」や「EV(電気自動車)」については何か取り組まれていますか?

 自動運転車やEVはバッテリー、センサーなどの電子部品がキーになりますので、深絞りとインサートモールドを中心にアプローチしています。深絞りは、主にセンサーの部品として多用されています。今の自動車は燃費や安全性の向上のために多くのセンサーを搭載していますが、自動運転には更に多く使われると言われています。また、インサートモールドは高圧電流を扱うEVとの相性が良く、実際に引合いも多くあります。自動運転やEVの本格化はまだ先ですが、参入は先行しています。また、秘密事項なので具体的には言えませんが、顧客と共同して技術開発などを行っています。技術開発は顧客も手探りなので量産に繋がらないケースも多いですが、決まれば付加価値の高いキーパーツとして採用されます。

医療分野の状況を教えてください

 医療は先進国の高齢化や新興国の所得向上などを背景に長期的に成長する市場です。上期は一時的に減少しましたが、医療としては初の深絞りの採用が決まり、また、2017年ごろに計画している英国の医療事業の米国展開など、参入領域が拡大しており先々は明るい見通しです。医療のメインは引き続き英国となりますが、日本や中国においても引合いは増えています。

埼玉工場の竣工から1年経ちましたが、現況と今後の見通しを教えてください

 スペースの8割ほどが設備で埋まるなど当初計画より前倒しで進んでいますので、2019年に予定していた拡張工事も早めると思います。自動車市場への本格参入に伴い、端面研削などの従来当社には無かった技術・設備も導入します。既存顧客の監査も一通り終了し、下期からはいよいよ新製品や新規顧客受入の局面に移ります。

海外の新工場の状況は如何でしょうか?

 メキシコ第2工場は、今年4月に開設してから人材の採用・教育、設備の搬入などの準備を進めており、間もなく量産がスタートします。現地ではインサートモールドやプレス部品の需要も多いことから両技術も移管することに決めました。インドネシアのPT Yamakou Indonesia は、今年1月に資本参加してから社員を出向させるなど技術支援をしており、将来連結子会社化する予定です。米国では、今年9 月に米国カリフォルニアのプレスメーカーElectric Stamping Corporationの事業を譲受しました。売上規模よりも既存顧客や人材に魅力があり、シナジー効果を期待しています。

今後の海外展開の計画を教えてください

 先日公表しましたとおり2017年にチェコ工場を開設します。英国のEU離脱の決定を受け、英国子会社への影響が不透明なこともあり計画を早めました。チェコは近年自動車産業の集積地として注目され、ドイツにもアクセスが良く、人材は教育水準が高く勤勉であるなど有利な条件が整っています。また、インド、ベトナムでの新工場開設の計画も進めています。

2015年2月に中期経営計画(売上高350億円、営業利益40億円)を発表して2年近くが経ちましたが、進捗状況について教えてください

 当初に比べ目標のハードルは上がっています。為替レートは計画発表時の1米ドル=120円から100円前後となり、英ポンド安も進んでいますので、この水準が続くと売上は50億円程度の押下げ要因となります(※)。また、OA機器向けの見通しも従来よりも厳しく予測を見直しました。一方、自動車向け新製品の受注や航空産業向けの伸びは想定以上であり、先行投資も早めているなど明るい材料も多いので目標の旗は現時点では降ろしていません。
※インタビュー当時のもの

最後に株主の皆様にメッセージをお願いします

 株主の皆様にはご心配をおかけしており深くお詫び申し上げます。恐れながらこの厳しい状況はしばらく続きますが、埼玉工場をはじめとする新工場が独り立ちし始める来期の途中から株主の皆様が期待する姿に近づいてくると思います。役員、社員一同こころより精進いたしますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。