株主・投資家の皆様へ

代表取締役会長兼社長 柴野 恒雄


上期の業績を振り返りましてどのように評価されますか?

 海外は先行投資の負担により苦戦している拠点もありますが、殆どの子会社は収益を牽引してくれました。国内はまだ赤字脱却出来ていませんが黒字化に向けて改善は進んでいます。連結では売上高・利益ともに前期実績および計画を上回りましたので、大満足ではありませんが満足できる結果であったと評価しています。

中期経営計画を見直されましたが中身はどのように変わりましたか?

 計画の見直しをすることにつきましては改めて陳謝申し上げます。市場別では、OA機器向けは見通しを当初計画の半分に見直しました。プリンターの構造の変更により一部の金属部品が不要になったことなどが背景です。自動車向けは想定よりも引き合いは多く長期的な見通しは明るいのですが、直近ではマンパワーの不足や、品質マネジメントシステム規格のリニューアルの影響などにより全体的に量産化が遅れており、更に想定為替レートも円高に推移しています。つきましては従来、目標年度は2020年3月期、売上高は350億円、営業利益は40億円でしたが、見直し計画は2023年3月期へと延伸し、さらに売上高を315億円から350億円の間、営業利益を25億円から30億円の間とチャレンジの意味も含めレンジを持たせた数値目標とさせていただきました。

EV(電気自動車)への取組みについて主要国や自動車メーカーが様々な表明をしていますが、柴野社長はどのようにお考えですか?

 いろいろな書物や雑誌、セミナーなどから情報収集していますが、EV市場の見通しは企業の立場によって幅があります。たとえば石油関連の企業は弱め、金融系は強めの傾向があり、コンサルティング系はその中間です。それらの情報にお客様の生の声を加えて考えますと、2030年ぐらいまではEVの拡大と並行してエンジン車(ハイブリッド含む)も成長すると推測できます。一方、中国は国を挙げてEV化に取り組んでいますので変化は早いと思います。普及のネックとされている給電設備を500万基以上設置する計画と聞いていますので、高速鉄道や高速道路などの過去のインフラ整備のスピードを考慮するとあっと言う間かもしれません。先日、出張先の大連で見たこともない小型EVが歩道を走っていて驚きましたが、法整備の課題はあるものの既にEV化は進んでいる印象です。

EV市場の拡大はアドバネクスにとってどのような影響がありますか?

 当社はむしろ電装化をきっかけに自動車に参入した企業であり元々エレクトロニクスは得意分野ですので、EV化加速は当社にとって歓迎です。当社の既存製品の大半はEVにも転用でき、また、バッテリーやインバーター向けも加わりますので、車1台あたりの当社製品の潜在需要はエンジン車を上回ると見ています。自動車は車種やメーカーを跨いで部品を共通使用することが主流になってきましたが、EVではその傾向が更に強まると言われています。既にいくつかのEV向け引き合いがありますが当社は計画中を含め海外18箇所に生産拠点があるなどグローバル化が進んでいますので、これから益々有利になると見ています。
 EVに限った話ではありませんが、欧米では自動車の主要な部分を網羅する“メガサプライヤー”と呼ばれる自動車部品メーカーがあり、それらとの取引の準備も進んでいます。海外企業であっても、独自提案は積極的に行っており、最先端製品の開発においては特に喜ばれています。バッテリー向けも高級車向けから大衆車向けまで幅広く対応しています。

市場環境だけではなく海外拠点を増やすなど体制も変わっていますが、どのように取り組んでいますか?

 海外子会社と本社がそれぞれの責任と権限で運営する一方、共通のテーマについては軸を設けて方針と情報を共有するようにしました。言語も時間も異なりコミュニケーションが難しい側面がありますので、データベースを活用するなどいろいろ工夫しています。また、テーマごとに営業、製造、品質管理、技術、海外などが一体となり顧客ニーズを分析しつつ開発するプロジェクトチームがいくつか発足しています。これらがトップダウンではなく現場から自然発生的に生まれてくるところが当社らしいところです。

メキシコに現地法人を設立されましたが目的を教えてください

 2016年4月に第2工場を開設しメキシコ国内向けの販売活動を行ってきましたが、想定以上に需要があることが分かり、今後の現地企業や欧米系メーカーとの取引および投資拡大を考慮して法人化しました。また、現地社員の愛社精神と責任意識の醸成にも資すると思います。社長は36歳の男性で、他の海外子会社同様現地出身者です。独特なメキシコの商習慣を熟知し、かつ、ユニークな販売戦略を執るなど手腕には大いに期待しています。一方、ガバナンスや自動車向けの方針・取り決めについては徹底的に遵守させています。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資(環境・社会・ガバナンス)を開始しましたが何か取り組みはされていますか?

 環境については相当前からLED蛍光灯を採用し、また、高価でもあっても環境にやさしい溶剤を使用するなど先行して取り組んできました。社会については11月22日の創立記念日に全拠点が一斉に社会貢献活動をするほか、フルフレックス制など社員の生活を考慮した勤務体制を導入してきました。特に女性の雇用環境については育児・介護休暇制度の充実や人事制度の整備などに注力しており、今年6月にウーマノミクスプロジェクトを推進する埼玉県から「多様な働き方実践企業」の認定を受けました。ガバナンスに関しては社外取締役2名の登用などがあります。詳細についてはHP(コーポレートガバナンスページ)に公表していますので興味のある株主様はご参考ください。
 更に、当社の場合は「独自の価値観(カンパニーステートメント)を基とするESG」もあります。昨今、ESG 投資ファンドが増えていますが、「きれいごとで投資する」をキャッチフレーズにユニークなESG 評価基準を持つ独立系投信が当社の「匠」に着目しポートフォリオ(運用銘柄)に加えていただきました。また、社員を大切にする会社の研究で有名な経営学の教授が当社に関心を持っていると聞いています。このテーマはここでは語りつくせないので、また別の機会で紹介させていただきたいと思います。

株主の皆様にメッセージをお願いします

 株式の保有を通じて当社を支援いただき感謝申し上げます。当社の状況を農業に例えると土を耕して、種を蒔いて、芽が出て、今はようやくツボミが出来たところかと思います。今後は花が咲き、実をつけ、収穫の時期が訪れますことを期待していただきたく存じます。