匠の技術

匠の技術とは


入社の経緯や、若手の頃の仕事について教えてください
 私は長男なので大学卒業後は新潟柏崎の実家に戻ると決めていました。実家のすぐ近くに新潟工場がありましたので、そこで働くつもりで入社しました。専攻は制御工学科(コンピュータープログラミングなど)で、入社したころは機械の稼働率やカム計算のプログラムをさせてもらいました。その後、機械設計を経て金属加工を理解するには金型を経験するべきとの上司の薦めもあり、金型設計に配属となりました。

“提案”で大事なことはなんですか?
 お客様とのwin-winを考えることです。そのため先ずお客様から「最終製品の機能」「この形状にした理由」「機能を有効にするための条件」を聞き出します。お客様も「良い物を作りたい」という想いを持っていますので、顧客・サプライヤーの関係はさて置いて、両者はしばしば「良い物を作る」という共通の目的にのめり込みます(笑)。そんな体験や思い出が信頼関係に繋がっていくのだと思います。

どのような成功事例がありますか?
 印象的なのは自動車用液体制御機構のプレス部品です。追加要求に対応し、かつ、いくつかの独自の発想で提案し受け入れていただきましたので非常に良いものが出来ました。あともう一つはプリンターカートリッジ用フォーミング部品です。当初は複数社購買でしたが、提案により製品精度が向上しお客様の生産ラインの歩留りが改善したことから、全種類受注頂けました。

なぜ提案ができるのですか?
 実現するために「何を」「どうしたらよいか」を常に考えています。悩みに悩んだ末に夢の中で解決策を思いつくこともあります。実現したいという強い想いと経験、知識が結びつき、発想を生むのではないでしょうか。

技術者としての信条は?
 一つは、専攻していたプログラミングの世界では間違えば必ず失敗しますが金属加工も同じ、ということです。正しい加工レイアウトであれば必ず結果が出ます。もう一つは、図面の線一本一本に心をこめることです。全ての線には意味があります。

匠とは?
 自分の考えにこだわりを持って実践し“こと”を完成させる人です。また、実績により信頼され多くの人が教えを請いに来るような人だと思います。当社の場合はチームワークも大切ですのでコミュニケーション能力も高くないと匠とは言えませんね。

中野さん

顧客の期待値超えを目指す発想提案


当社は図面に独自の提案を加え、顧客の期待を超えることを目指しています。購入した物やサービスが想定を越えたときは嬉しく思うものですが、当社のビジネスでも同じです。当社が追究する“美しい作品”とはそのように顧客の期待を超え喜んでいただけるもののことです。


提案の背景
 通常、部品加工メーカーは顧客が設計した図面を受領し、その通りの部品を製造し納めます。顧客の設計図面は最終製品の機能やスペックは満たしていますが、構成部品のひとつひとつの素材や加工特性までは十分に考慮されていないことがあります。そのような場合、無理な加工を強いるので品質は安定しませんし、顧客工程においても歩留りの悪化に繋がります。

当社の発想提案
 当社は部品の形状・寸法公差だけではなく、顧客の最終製品の機能や生産工程についても聞き出します。そして、それらを考慮した上で最適な加工方法や形状の提案を行います。当社はコイリング、フォーミング、プレス、インサートモールド、深絞りなどの多くの加工技術や、高硬度材加工など“ばねメーカーならでは”のノウハウを保有しており、技術者は多くの“引き出し”を持っています。よって様々な提案が可能となります。

win-win の効果
 提案により顧客工程の品質が安定するほか、作業を一部請け負うことなどにより顧客側工数を削減することも可能です。その場合、多少付加価値を加えた価格設定でも最終製品のトータルコストが下げられますので、双方が利益を得られます。

代表事例(自動車の液体制御機構用部品)
検討1回目
(要求)フォーミング加工を前提とした部品の引き合い
(提案)検討の結果、フォーミング加工では精度確保が難しいと判断、プレス+絞り加工で提案
検討2回目
(要求)“ばね機能”追加
(対応)形状はそのままで“ばね機能”の追加を実現
検討3回目
(要求)数百ニュートン*の圧力下でも変形しない強度
(対応)ばね荷重計算を解析ソフトで検証するなどで要求強度を実現
(提案)液体の流路をロジック想定した上で改良形状を提案
(提案)相手部品との“パッチン留め”を提案(顧客工数削減+組立品質安定)
結果
双方でメリット(品質、コスト)を享受