株主・投資家の皆様へ

代表取締役会長兼社長 柴野 恒雄


2019年3月期第2四半期の業績を振り返りましてどのように評価されますか?

 売上高は、自動車向けと医療向けが相変わらず好調だったことに加え、OA 機器も前年同四半期比減ではありますが想定以上でおおむね順調でした。一方、利益面では新工場の立ち上げの遅れや、原材料の高騰、米中貿易摩擦の影響などにより苦戦しており、前年同四半期を大きく下回る結果となりました。下期も新工場立上げのコスト負担や貿易摩擦の影響が継続する見通しであることから通期業績予想は、売上高は上方修正いたしましたが、各段階利益については下方修正させていただきました。

ここ数年で設立もしくはM&Aにより取得した新工場の状況はいかがでしょうか?

 2016 年開設の埼玉工場は稼働率が上がってきました。受注好調で余剰スペースがなくなりましたので来年6月完成を目処とした増設工事を着工しました。
 同じく2016年開設のメキシコのケレタロ工場は進捗状況が埼玉工場よりも1 年程度遅れており、今年の6月にようやく最初のモデルが量産スタートしました。設備投資や人員増強などによる固定費先行が収益の圧迫要因となっていますが、これから波に乗って売上が伸びてきますのでマイナスは徐々に解消されていく見通しです。
 千葉工場は、100モデルぐらいの深絞り製品の新規バックオーダーを抱えていますがそれぞれの量産化に時間がかかっており収益的には苦戦が続いています。今後は量産に移行し稼働率を上げていくとともに、生産の一部をチェコ工場に移管する準備をしていきます。
 インドネシア工場は日本人エンジニアの常駐により品質的にも安定してきたことなどから受注も回復し黒字化が見えてきました。一方、昨今のインドネシアルピアの下落はマイナスに影響しています。

自動車業界はEVや自動運転の開発激化、自動車部品メーカーのメガサプライヤー化など大きく変化していますが、御社はどのように対応していますか?

 皆様ご存知のとおり、自動車はEVに加えAIなどの自動運転技術が加速していますが、これらには金属を中心とした機構部品が多用されるので当社にとっては追い風です。実際にパワーコントロールユニット、バッテリー、各種センサー類などの多くの基幹部品向けに当社製品の採用が決まっています。また、比較的最近取引を開始した自動車部品メーカーに加え、元々当社と取引のあった日本の有力家電メーカーもこぞって自動車に参入していますので、当社の自動車向けの割合は拡大しています。日本においては開発段階から顧客と協業し当社独自の提案により付加価値を上げる取組みを行なっていますが、最近では中国やインドなどの新興国でも開発拠点が設置され独自の提案をする機会が増えてきました。グローバルネットワークを活用し海外でも付加価値が認められるようにしていきます。

アメリカが保護主義政策を進めていますがどのような影響がありますでしょうか?

 NAFTA(アメリカ、カナダ、メキシコの3国による自由貿易協定)の見直しについては心配していましたが、当社が注力しているメキシコ事業にとっては影響が少ない内容で決着しました。今後もメキシコは南北アメリカ大陸における自動車産業の中心地となっていく方向性に変わりはありません。一方、関税増加によりアメリカ子会社では原材料費が高くなり収益を圧迫しています。また、中国においても全体的にアメリカ向けの輸出が減ったことにより中国子会社は影響を受けています。

イギリスがEU から独立しますがどのような影響を想定していますでしょうか?

 マスメディアや現地から情報を収集していますが、今のところ最終的にどんな条件で離脱するかが分からないので明言はできません。当社としては対策を打ちたいので早めに決めて欲しいところです。一方で、2019年中頃に中欧のチェコに工場が完成する予定ですのでイギリス工場から生産移管することで影響を最小限に食い止めます。

以前、マンパワー不足をリスク要因として挙げられていましたが、現在の状況はいかがでしょうか?

 相変わらず採用面では苦戦していますが、その傍ら人材教育の充実を図ってきました。従来は戦力になるまで3年はかかっていましたが1 年半ぐらいまでに短縮することが出来ました。一方、今後も日本はますます働き手不足が進むことや、せっかく慣れても辞めてしまう人もいることから、自動化を推進するなど人手に依らない体制も目指しています。自動化技術は先ずは埼玉工場で開発し、そのモデルケースをアメリカなどの先進国にとどまらず人件費が高騰している中国やタイなどにも展開していく計画です。

取締役のメンバーが変わりましたが、取締役会の雰囲気はいかがでしょうか?

 社外取締役の小谷さんと福島さんは以前当社の顧問だったことから当社のことをよく理解されており、また、お二人とも社長経験者ですので指摘や助言は具体的、かつ、的確です。中野さんはトヨタ自動車など自動車業界での経験が長く、現在はばねメーカーの社長をされています。トラック用の大きいリーフスプリングの製造・販売を手がけているなど、当社と領域は違いますが有益な情報やアドバイスを提供してくれます。お三方とも当社の企業価値向上のため本気で参画してくれていますので、厳しい意見は飛び交いますが取締役会は毎回自由闊達な雰囲気となっております。

株主の皆様にメッセージをお願いします

 中期経営計画発表から積極的に海外展開や工場増強を行なってきましたので、現在建設中・準備中の工場を含め生産エリアの面積は5年で従来の2倍となりました。一方、メインの自動車向けは受注から量産開始まで5年前後と長い時間を要することから、売上高や利益の伸びはこれからとなります。固定費先行で収益が上がらず、株主の皆様はやきもきされているかと存じますが、稼働率があがればブレイクスルーしますので、何卒変わらぬ支援を頂戴したくよろしくお願いいたします。