匠の技術

匠の技術とは


学生の頃はどんなことをされていましたか?
 大学の専攻は物理化学ですが研究室は宇宙物理で、新しい彗星の発見に挑戦していました。プログラミングが趣味だったこともあり研究室ではJAXA(宇宙航空開発研究機構)が提供する宇宙観測データから新しい彗星を見つけるためのベースプログラムを作っていました。残念ながら在学中は見つけられませんでしたがそのプログラムは後輩たちが引き継いで使っています。

アドバネクスに入社した経緯を教えてください
 プログラミングが好きだったこともありIT系の会社から内定はもらっていたのですが、ものづくりにも興味がありましたので当社にも応募しました。就職活動中には有名な大企業の工場もいくつか見学したのですが、新潟工場が古いながらもゴミ一つ落ちておらず整然としているところに感動したこともあって当社に決めました。

アドバネクスに入社して良かったと思うことはなんですか?
 なんでも挑戦させてくれることです。デジタル解析を高度化していくためにはある程度高額な投資も必要なのですが、チャレンジしたいとお願いしたことは相当程度叶えてくれます。仕事は決して楽ではありませんが、好きなことをさせてくれるのはありがたいです。

仕事でのこだわりはなんですか?
 様からはスペースや応力などの条件だけではなく最終製品の使い方もちゃんと聞いて理解しないと良い提案や設計は出来ません。ですからお客様には出来るだけ会いに行くようにしています。

今まで特に苦労したことはありませんか?
 若輩者なので、先輩方と比べると苦労というほどではありませんが、ずっと現物ではなくモニターを相手していましたから実際のサイズ感が分からなくなってしまったことがありました。1ミリのばねの3D図を20インチのモニターいっぱいに映すので無理もありません。今はなるべく現物に触るようにしています。

いま特に注力していることは何ですか?
 金型設計のプログラムを開発することです。深絞りの金型設計は未だにベテラン社員の経験と感覚が頼りですので長い時間が掛かりますが、比較的簡単な形状であればコンピューターによる自動設計が可能です。これが実現できれば難易度の高い深絞りのみをベテランが手がけて、それ以外を自動設計で対応するなどの分業ができるようになり、生産性が大幅に改善されます。

最後に、赤津さんにとって匠とはどんな人ですか?
 現場、生産性、お客様の要求、コストや利害など全体を把握した上で最適なバランスに落とし込める人だと思います。デジタルを駆使し至極のばねを設計することは決して難しくありませんが、コストや生産性が良くなければそれはただの自己満足です。

赤津さん

劇的な進化をもたらしたデジタル解析技術


当社はコンピューターを使ったデジタル解析も行なっています。形状や材料の厚さ・太さなどをソフトウェアにインプットすることで試作品を作らなくても応力(ばねが反発する力)や耐久性などのばねの性能を測ることが出来ます。また、最適な加工方法をシミュレーションすることも可能です。当社は長年蓄積された金属加工ノウハウとデジタル解析技術を融合させることで高い付加価値を生み出しています。


提案の背景
@データで根拠を示せる
応力や耐久力などのばね性能は形状、金属特性と太さ・厚さなどに公式を当てはめて計算していますので、単なる計測結果とは違い、その性能に至った根拠とデータの裏づけを示せます。

A顧客の設計負荷軽減
以前から「スペース(大きさ)」「応力」「耐久性」「諸要件」などの顧客が提示する条件を元に当社でばねを設計することは行なっていましたが、データの裏づけにより精度と信頼性が高まりました。

B改良提案
データの裏づけがあるため、顧客の設計に対して説得力のある改良提案ができるようになりました。改良提案により顧客の最終製品の品質向上や、トータルでのコストダウンなどが実現できます。

C試作にかかるコストと時間の削減
通常、性能試験は試作品を作ってからそれを実測しますので、試作品1点1点にコストと労力と時間がかかりますが、デジタル解析を使えばほとんど一瞬で計算できます。

D量産立ち上げ時間の短縮
通常、試行錯誤の繰り返しで時間をかけて加工工程を作りあげますが、デジタル解析によりエラーは予測できるので時間を短縮できます。

当社の強み
ソフトウェア自体は市販のものを使っていますが、そのままでは使用できません。当社が長年蓄積した加工技術やノウハウと融合させることで初めて実測値に近いシミュレーションが可能になっています。

自動車向け顧客もデジタル解析を重宝
自動車は一つの品質問題が人命に直結するため他の業界に比べ品質要求が厳しいです。当社はデジタル解析により性能の根拠をデータで示せて、品質保証の説得力が高いので特に自動車向けの顧客から高い評価を受けています。

デジタル解析のイメージ。線材の太さ、形状、圧力、トルクなどの条件を自在に変えてシミュレーションし、視覚的に確認ができる。