鬼山工場長は「匠の技術者」についてどのような考えをお持ちですか?
鬼山:私が考える「匠の技術者」というのは、常に新しい技術を取り込みつつ、コンセプトをもって新しいものを生み出す人のことです。当社では実際にそのような行動をとってくれる人が岡村さんを筆頭に多数出てきています。彼らにはすべての仕事を任せられる信頼感があります。当社においては技術力が競争の源泉であると考えており、「匠の技術者」は会社の宝であると確信しています。私の仕事の中で最も大切なことは「匠の技術者」を育てることであり、それが私の使命だと考えています。
岡村さんはどのような経緯で入社されたのですか?
岡村:小さい頃からテレビとかラジオを分解したり、組み立てるのが好きでした。ものづくりに対する情熱は生まれつきのものだったと思います。学生時代から旋盤などの工作機械を扱っていたこともあり、1983年に当社に入社しました。始めの頃はトーションばねのエンジニアとして金型の設計や機械のレイアウト、生産まで一貫してやりました。
当時は技術を習得するのに「見て覚える」という昔気質の文化が残っており、先輩方の仕事を一生懸命に見て、様々な経験をさせてもらいました。その当時に得た経験というのは、今になっても役立っています。
「タモント」の開発で苦労した点を教えてください。
岡村:タモントは他社のゆるみ止めと違い、ボルトに締め付けた通常のナットの外側にはめることで、ナットのゆるみを防止する製品です。最初にお客様からゆるまないねじを作りたいというご相談をいただき、図面を見るととても無理だと直感的に思ってしまうほど、複雑な構造でした。試作品の開発のため、まずは手作りで試行錯誤を繰り返し、一つ製品を作ることができました。そこから機械での生産をするための図面化をするのに、半年ほどかかりました。手で作れたものを、どうやって自動機で再現し量産化できるようにするのかという問題に悩み、試行錯誤を繰り返しました。自分のこれまでの人生で一番と言えるくらい悩みましたが、鬼山工場長から「手でできるのであれば、機械でも必ずできる」というアドバイスを支えに、やっと製品化に行き着くことができました。
できた金型をセットして、量産化のため機械が動き始めたときの達成感は、涙がでてくるほどうれしいものでした。
今後、アドバネクスをどのような会社にしたいと思いますか?
岡村:お客様が会社を評価する基準はその会社の技術力であり、それがアドバネクスを支える重要なものだと考えています。また、お客様あっての当社という認識を持っていますので、お客様の悩みを解決しうる技術力を備え、そのお悩みの解決のために提案を行い、お客様に喜んでいただくことが第一です。アドバネクスはお客様の期待に常に応えられる会社であることを認知していただき、今後も成長していきたいと思っています。
また、技術の継承も大事なテーマだと思います。次世代の匠たちの育成に力を入れており、中間クラスもどんどん育っていますし、若手の教育も順調です。
最後に岡村さんにとって「匠の技術者」とはどんな人のことですか?
岡村:「できない」とは言わない人だと思います。