株主・投資家の皆様へ

代表取締役会長兼社長 柴野 恒雄


Q1. 2019年3月期の業績を振り返りましてどのように評価されますか?

売上は引き続き自動車、医療向けが拡大したことから前期比増収となりました。 一方、各段階利益は主に埼玉工場、メキシコ工場、インドネシア工場の新工場の先行投資負担を解消できなかったことなどにより減益となりました。 収益回復が遅れている主な要因が先行投資にありますので、売上拡大に応じて問題は解消される見込みです。

Q2. 米中貿易戦争や英国 EU 離脱の問題はどの程度影響しましたか?

アメリカとメキシコでは影響はほとんどありませんでした。 中国は、国内景気自体の冷え込みと、米国向け輸出の減少が影響し売上を落とした拠点もあり、4拠点 (大連、上海、東莞、常州)合 計では前期比微減でした。 イギリスは、まだ EU 離脱問題が決着しておらず直近では目立った影響は出ていません。 仮に合意なしの離脱となっても主力のタングレス・インサートは米国向けが大半ですし、医療向けもほとんどがイギリス国内向けなので影響は限定的と見ています。 また、チェコ工場がイギリスのリスクヘッジとなっていますので、どちらに転んでも影響は少ないと思います。 今後も状況を見ながら地政学リスクに対応していきます。

Q3. 今期稼動するチェコ工場とインド工場はどんな工場になっていきますか?

チェコ工場は、前述のとおりイギリスのリスクヘッジの役割も担っています。 今年の6月中に営業を開始する予定で、この株主通信がお手元に届く頃にはスタートしています。 既に確定した受注も多く、最初は千葉工場から移管する導通検査用プローブピンの深絞りと、イギリス工場から移管する医療向けのばねの生産からスタートします。 メキシコ工場と埼玉工場は自動車向け中心で固定費が先行しましたが、チェコ工場は最初から売上が確保できるので赤字幅は縮小できる見通しです。 一方で、4、5年後の売上となる自動車向けの受注活動も積極的に行なっています。

インド工場は、固定費負担を軽減するため、最初は小規模スペースから開始します。 二輪車向けが中心ですが、自動車部品のメガサプライヤーも同地に多く参入していますので自動車 向けも視野に入れて狙っていきます。 インドは国内需要が膨大なので今後も大きな期待を持っています。

Q4. チェコ工場、インド工場の完成で海外17工場の体制となり、より網羅されたグローバルネットワークとなりましたが、どんな利点がありますか?

当社の顧客は自動車部品メーカーをはじめ、世界中に拠点を持つグローバル企業が多く、それらの進出先にも当社の拠点がありますので喜んでいただけています。 特に自動車部品のお客様は自動車部品共通化に伴い、世界各地で同じものを作るケースが増えていますので、それぞれの拠点から同じ製品を供給できる当社は有利な立場にあります。 ただし、品質やサービスが均一でなければ満足していただけないので、日本での技術研修やデータベースを使った情報共有などにより拠点間の差異を減らす努力をしています。

Q5. 自動車向けの売上が順調に拡大していますが、最近受注した製品にはどんな特徴や傾向がありますか?

プラスチックのボルト締め部分を補強するインサートカラーが急拡大しています。 トヨタ自動車の TNGA (トヨタニューグローバルアーキテクチャー) で知られているとおり、自動車業界は部品共通化が進んでいますので1アイテムあたりの数量が増加しています。 また、軽量化ニーズによるプラスチック化加速も後押しとなり、需要が拡大しています。 なお、インサートカラーに関する特許について、先日当社の権利が確定しました。 ハイブリットを含む EV のキーパーツ向けが今期ようやくスタートします。 この製品は将来的には数倍のボリュームに拡大し、海外でも並行生産していく予定です。 EV 関連は最近特に引き合いが多いので、今後はその生産実績と、埼玉工場に設置する大規模なクリーンルームをアピールし、受注に拍車をかけていきます。

Q6. メキシコ工場は前回のインタビューでは「固定費先行が原因で収益的に苦戦中」と伺いましたが、現在はいかがでしょうか?

投資が一段落した一方、自動車向けが徐々に立ち上がってきましたのでブレイクイーブンに近づいてきました。 メキシコは競合が少なく、引き合いは当社に集中しています。 先々の見通しは非常に明るいので来期から収益を牽引する拠点に変貌すると期待しています。

Q7. 格品ビジネスの状況はいかがでしょうか?

新製品「インスタントロック」を発売しました。詳細は特集『新製品「インスタントロック」』をご覧いただきたいのですが、顧客の困っている声をそのまま具現化した製品で、爆発的にヒットする可能性もあると思っています。 ねじ穴補強具の「タングレス・インサート」は、従来品の切り替え需要や、航空機向けの拡大などもあり2019年3月期はじめて売上10億円を超えました。 一方、海外子会社が個別に活動し非効率な面もありましたので、今後はグループで戦略と情報と在庫をシェアし、今まで入り込んでいなかった市場に参入するなど販売戦略を見直していきます。

Q8. RPA を導入する企業が増えていますがアドバネクスではどうでしょうか?

2年ほど前から RPA を調査してきまして、このほどその導入に向けたプロジェクトチームを発足しました。 作業のたな卸しを行なったところ、当社においても相当な作業が RPA に置き換えられることが分かりました。 スピードと正確性は人間がやるよりも優れていますので、費用対効果を確認しながら導入を進めていくことになると思います。 一方、多くの作業が RPA に置き換わっても人員削減するわけではありません。 むしろ空けた時間をアイデア出し、カイゼンなどの付加価値の高い活動に振り向けて収益に結びつかせられるかが課題です。

Q9. 今期の見通しについて教えてください

売上219億円、営業利益3.3億円、経常利益2.6億円、当期純利益0.5億円を予想しています。 市場別では自動車、医療向けは引き続き拡大する見通しで、 OA 機器・家電向けは横ばいもしくは微減と見ています。 工場別では、メキシコ工場、埼玉工場、インドネシア工場はブレイクイーブンの目処がつき、前期に比べ負担は圧縮できると思います。 一方、チェコ工場、インド工場は稼動初年度なので、通年では赤字を見込んでいます。 今期も高収益体質に向けた過渡期になりますが何卒見守っていただきたく、また、来期以降の収益改善をご期待いただきたくよろしくお願いいたします。