2015年度は、埼玉工場立上げに掛かる固定費・経費の増加、深絞り加工の注力市場転換(家電→自動車)に掛かる負担は計画に織り込み済みでしたが、OA・家電系の需要減、および中国市場停滞による売上減は想定を超えました。当初計画を下方修正するなど、ご心配を掛けてしまい大変申し訳ございませんでした。一方、自動車・医療・インフラ向けは引き続き好調で、加えて宇宙航空機向けも伸びてきていますので、中期経営計画の2020年3月期売上350億円、営業利益40億円の目線は変えていません。
自動車市場向けは、最も売上を伸ばしたタイのほか、日本、米国、中国と軒並み好調で前期比大幅増加となりました。自動車は燃費向上のみならず、自動ブレーキや横滑り防止などの安全性向上のニーズが高まり、センサー系自動車部品が増えておりますので、精密部品や電子部品を得意とする当社への引き合いは増えています。また、EV( 電気自動車) のバッテリーや電子デバイスにも当社の製品が多く使われます。
医療は英国が中心で、喘息吸引薬やインシュリン自動注射器などが市場拡大を背景に成長しています。英国の医薬品メーカーと共同開発したこれらの製品は、高収益でライフサイクルが長く、世界中で消費されます。中国などの新興国は所得が向上し食生活も豊かになり、糖尿病患者が増えていることも拡大の背景になっています。国内も留置針など使い捨ての製品を中心に新しい案件も入っています。
2014年度に深絞り加工を自動車関連顧客に紹介して回ったのを「種まき」の時期とすると、2015年度は「芽が出てきた」時期です。深絞りは、切削や鍛造など高コストの工法に比べ劇的に安く大量生産できることなどから、金型の生産が追いつかないほど受注しています。深絞り加工自体は従来からある工法ですが、これを当社の超精密金型技術と融合させたことと、センサー系自動車部品に展開したことが画期的でした。切削等からの工法転換によるコストダウンは、自動車向けだけではなく、医療・インフラ・家電向けでもニーズがあります。今は負担が先行していますが、2、3年後は数字(売上・利益)になって表れますので期待してください。
機械搬入は7割まで進みましたが、量産は顧客の品質試験が終了してからですのでまだ2、3割程度です。
社員も新規に十数名採用しました。今後、材料搬入、製造、品質検査、梱包までを自動化し、従来の3分の1の人員で運転できるスマートファクトリーにする計画で、このコンセプトは海外にも展開します。冬頃には機械搬入や顧客の量産試験も完了し、収益に貢献し始める見通しです。
顧客拠点がメキシコやインドネシアにあれば当社製品の現地調達が可能です。つまり当社は、顧客と同じようにグローバルに拠点があり、それぞれのエリアで現地供給が可能なので拠点の少ない競合に比べ有利です。また、逆にインドネシアでの取引をきっかけに、日本でも取引が始まるケースもあるなど、海外拠点が多いほど連鎖的に新規取引の機会が増えます。当社は更に、チェコ、インドにも工場進出し、受注の連鎖を拡大させます。
ロックワン、タングレス・インサートなどの当社独自の規格品は、知名度が低いことなどから顧客や用途が限定的に留まっています。一方、性能や利便性は高く、広く普及するポテンシャルはあると思います。楽天などのネットショップに出店し一般の消費者も入手できるようにすることで、商社などでは展開できなかった領域をカバーします。米国や中国は、日本に比べて格段にネットを介した取引、いわゆるEコマースが浸透していますので、その流れに乗れればと思います。
「エコ・新素材・新技術」がキーワードの製品を開発中です。まだ公には出来ませんが、従来当社に無かった領域の新しい製品、技術です。これもすぐに数字に表れる事業ではありませんが、10 年後は世界のスタンダードになるのではと期待しています。ご紹介するのを楽しみにしています。
被災された方々には心よりお悔やみ申し上げます。当社は大分に工場がありますが、幸い建物、機械ともに被害は無く、社員も無事でした。一部顧客やサプライヤーで被害がありましたが当社には大きなインパクトはありませんでした。
当社の社員ががんばってくれたおかげで、受注が増えており100型近い金型が控えています。下期から売上が拡大してくると見ています。
人間で言えば70歳は高齢だが、企業としてはまだ若いと思う。これからも100年200年続く企業として成長し続けていきたいです。
金属加工は幅が広く、当社の事業にそぐわないものもあるかもしれないが、断ってしまったらその時点で関係がたたれるので、他社の協力を得ても全て受けていきます。精密に限らず金属加工であれば守備範囲と考えています。