特集

当社はカーボンナノチューブを応用した製品を開発し販売する「カーボンナノチューブ事業」を発足いたしました。このコーナーではカーボンナノチューブの特徴と同事業につきまして紹介させていただきます。


カーボンナノチューブとは


カーボンナノチューブ(以下、CNT)とは、「カーボン=炭素」「ナノ=ナノメートル(nm)」「チューブ=円筒」の3つの単語が名前の由来となっている素材です。CNTは1991年に発見された新しい物質で、炭素原子が結びついて筒状になっており、直径はナノメートル(10億分の1m)単位と、人の髪の毛の5万分の1の細さです。ダイヤモンドや黒鉛(鉛筆の芯)等と同じ元素でできていますが、炭素の結晶構造の違いのため全くことなった物質となっています。ダイヤモンドの2倍の硬さ、アルミニウムの1/2の軽さ、銅の1,000倍の電流耐性と10倍の熱伝導性、鋼鉄の100倍の強さ(引張耐性)等の特性を持つ優れた物質です。産業界ではこのCNTの実用化に向け様々な取り組みが進められています。たとえば地球と宇宙をつなぐ「宇宙エレベーター」のケーブル、銅線の1,000倍の電気を効率的に運べる送電線、LSI(大規模集積回路)の超微細化に応用するなどの研究が進められており、まさに夢の素材といえます。

CNTの構造


CNTの特性


なぜ「ばねメーカー」であるアドバネクスがCNTをやるのか


当社は創業以来、ばねを中心とした金属加工事業を行ってまいりましたが、将来的な事業の多角化を図るべくCNT事業に参入することにいたしました。CNTは前述のように優れた性質をもち新規事業として大きな市場規模に成長する可能性を秘めた素材でありながら、まだ実用化の例が少ないことからビジネスチャンスがあると考えています。当社は埼玉県蕨市にCNT事業の研究開発センターを新設するとともに、CNT研究において先進性のある大学や地方自治体の協力を得ながら産学官の体制で研究開発に取組んでいます。


どのような事業展開を考えているのか


CNTはその結晶が集結しネットワーク化されると抵抗が発生することから、通電により発熱します。また、その発熱効率は一般的に使用されているニクロム線ヒーターに比べ消費電力が少なく(実験段階では25%の省エネ効果)、効率的な発熱が可能であることなどから発熱体として様々な分野に使用されることが想定されます。当社は、CNTの結晶を含んだ溶液を調製し、それを塗布した個所に電極を接続することで発熱させるCNTヒーター「HEATNEX®」を開発しました。「HEATNEX®」は、その優れた熱伝導効率と高い形状自由度により床・壁暖房などの住設分野、道路の融雪などのインフラ分野、温室などの農業分野、電気自動車などの輸送機器分野、衣料分野、ロボット分野など様々な市場への展開が可能と考えております。また、電極設計においては当社の金属加工技術を応用しておりますので、高い競争力も確保できると見込んでおります。当社が具体的に取り組んでいる案件のひとつとして、信号機の融雪ヒーターがあります。雪国では信号機が白熱電球式から省電力のLED式に代わったことで、従来発熱により溶けていた積雪が溶けず信号が見えなくなるという問題が発生しており、この解決策としての「HEATNEX®」の実用化を検討しています。


発熱体