株主・投資家の皆様へ

代表取締役会長兼社長 柴野 恒雄


 株主の皆様には、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 第67期のご報告をお届けするにあたり、状況報告に関しては以下のインタビューに代えさせていただきますので、ご一読いただければ幸いと存じます。

前期(2015年3月期)の業績はいかがでしたか?

 売上高は2014年3月期に比べて8.8%増の294億87百万円となり、営業利益は同31.8%増の10億81百万円、経常利益は同21.0%増の9億92百万円となりました。主力の自動車向けが伸びたことから、増収増益となりました。当期純利益については、関係会社株式の売却に伴う少数株主利益の計上等により21.6%減の5億35百万円となりました。
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決算説明会資料

売上高と営業利益、経常利益については前年度を上回る実績をあげましたが、社長から見てどのようなところが良くなった要因とお考えでしょうか?

 一番の要因は、中長期的な目標を基に、グループ各社が計画的に改善・強化を進め、組織力があがったことにあると思います。計画を共有し、各社の目標管理がし易くなったことがグループの業績向上につながったと見ております。また、船橋電子の深絞り技術がアドバネクスの営業力を介したことで多くの新規顧客獲得に成功したなど、これまでにない広がりを見せたことも明るい材料です。

海外の事業環境はどうみられていますか?

 海外においては、取りこぼしのないようにしっかりと経営資源を振り分けています。特に中国では、大連、常州、東莞の工場は計画通り伸びると考えております。一方、生産拠点としては人件費が割高になっている上海工場は、固定費の削減を進めるとともに、上海近郊の杭州、青島等に営業領域を広げるべく、工場の移転を検討していきます。
 アジアも一部を除き売上増加傾向で、ヨーロッパでも医療機器分野の注文が増え、売上・利益共に大きく貢献しました。
 医療機器は、人命に関わるため厳しい品質基準がありますが、当社では十何年も前からこの分野にコツコツと取り組んできたこともあり、ようやく花開いてきたと考えています。

プラスチック事業を担当する第一化成ホールディングスの全株式を3月末に台湾のABICOグループに譲渡しましたが、目的と狙いは何でしょうか?

 第一化成の根幹となるプラスチック事業が大きな成形品にシフトしてきている一方、ばね事業は精密加工分野に進んでいることから、関連性が薄くなってきました。
 更に、プラスチックと比較すると、精密ばね事業の方が投資の費用対効果が高く、収益率が高いということが顕著になってきました。またプラスチック事業は、設備投資額が精密ばね事業と比べてはるかに大きくなり、投資の実施からリターンを得るまで非常に長い時間がかかる傾向があります。そういった背景から、第一化成にとっても資本力のある企業と一緒になったほうがより成長できるだろうと考え、元々当社のコア事業であったインサート成形事業を除いて、ABICOグループに株式譲渡いたしました。当社は投資効率が高く、利益率も高い金属加工事業に経営資源を集中していきます。
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子会社の異動を伴う株式譲渡に関するお知らせ

今期の業績はどのようになりますか?

 プラスチック事業を売却したことに伴い、今期の売上は32.9%減の198億円、経常利益は13.4%減の8億60百万円を予想しております。一方、精密ばね事業に比べ収益性の低いプラスチック事業が連結から外れたことで、営業利益率は前期の3.7%から、今期は4.4%へと上昇を見込んでおります。前期実績からプラスチック事業を除いたベースでは、今期の売上は12.3%の増加、営業利益は14.4%の増加になり、拡大基調は続く予想です。

今期の事業環境についてはどのように見ていますか?

 自動車向けに期待しております。自動車向けは企画から量産まで非常に長い時間がかかるため、数年前から営業活動にて受注できた新規案件が、今期漸くスタートする予定です。今期は、それらの自動車向け新規案件が売上増に貢献すると見ております。来期以降も続々と新規案件が立ち上がっていく見通しですので、自動車向けの成長は特に期待しております。
 他方、OA機器向け(主にプリンター)は、ペーパーレス化が進み、市場が小さくなっていく兆しがありますが、前期は円安の追い風があったため微増となりました。また、昨年度買収した船橋電子の持つ深絞り加工技術を幅広い分野のお客様に紹介し、積極的に提案営業を行っております。その甲斐もあって、この1年間で自動車系、医療系に留まらず、インフラ系、住設系、農具・漁具など幅広い分野から多くの案件の引き合いがありました。それらの成功例を用いて、今期は海外においても展開が可能と思っています。
  余談ですが最近、年間数千万個も流れる大きな医療器分野のプロジェクトのため船橋電子のエンジニアをイギリスに派遣した際、直接イギリス医療機器メーカーのお客様と話す機会がございました。エンジニア同士、膝を突き合わせて話しこんだことで、大幅なコストダウンが可能となるような画期的なアイデアが生まれるなど、非常に有意義でした。このような事例がイギリスだけでなく中国からも伝わっており、手応えを感じています。この流れを全世界で展開したいと思っております。

中期経営計画を発表されましたが、どのような内容ですか?

 今年の2月に中期経営計画“Breakthrough to 2020”を発表し、「金属加工総合メーカーへの挑戦」を主要テーマに掲げました。
 エリア戦略、市場戦略、製品戦略、M&A戦略の4つの戦略を基に、5年後の2020年3月期において連結売上高350億円、営業利益40億円、ROE22%を経営目標にしております。
 詳細は特集ページにて解説しておりますので、そちらをご参照ください。

船橋電子から事業を譲り受けましたが、その狙いと今後の事業計画について教えてください。

 今年の4月1日をもって船橋電子から事業を譲り受け、社員も機械もアドバネクス本体に取り込みました。我々は今までのM&Aを通じ、組織としての相乗効果を発揮するためには同じユニフォームを着、同じ夢を持ち、家族のようにならないといけないということを学びました。子会社として置いておくのではなく、良いものも悪いものもすべて取り込んで、一緒になることで初めてアドバネクスという文化の中でそれらが生きてくると考えています。事業譲受の目的は、企業文化を一つにして同じ方向を向いていきたい、という私の願いでもあります。

アジアにおいて、1月にインドのデリー、4月に中国の重慶に営業拠点を開設されました。それぞれの目的と今後の計画を教えて下さい。

 両拠点とも自動車分野での販路拡大が目的で、既存顧客へのサービス拡充と新規顧客開拓を進めていきます。デリーもそうですが、中国の重慶にも多くの日系及び欧米系の自動車部品メーカーが進出しています。当社の事業範囲に入るものであれば、基本的にはすべて受けますが、当社でできないのであれば、協力会社を探してでも対応するという方針があります。お客様から、アドバネクスに相談すれば解決するという期待感をもってもらえるようにしており、実際、口座も多く開設できています。
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埼玉工場の建設工事の進捗はいかがでしょうか。

 現在、基礎工事が終了し、計画通り10月末に引き渡しされる予定です。11月からは配線等いろいろな工事が入り、機械の移動はそれらの完了後となりますので、稼動開始は来期頭からとイメージしています。スマートファクトリーのコンセプトに合うような、省人化・合理化を追求した工場にするなど、国内外を含めた最高の工場にしようという意気込みをもっています。
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最後に株主様へのメッセージをお聞かせください。

 当社は本年2月に発表した中期経営計画において、連結業績に連動して配当性向を30%に引き上げる目標を設定いたしました。2015年3月期の配当は、期初予想の一株あたり2 円を1円上回る3 円とし、配当性向は23.2%となりました。株主様の期待に応えるべく中期計画の達成及び配当性向30%の実現を目指し、引き続き努力する所存でございます。今後ともご指導、ご鞭撻を賜りたく、何卒よろしくお願いいたします。

業績推移