匠の技術

匠の技術とは


高橋さんは技術者として、どのような方ですか?
鬼山:なんでも興味を持ち、新しいことにすぐに飛びつくタイプの人間です。飛びついたものは、途中で投げ出さず、最後には形にしてくれます。他に際立った点としては、人が好き、聴き上手。また、どのように人を育てていくかをよく考えているので、ちゃんと社員を成長させてくれています。しかし、少し話が盛りだくさんになり過ぎる傾向がありますね。(笑)

高橋さんはいつ頃からもの作りに興味を持ったのですか?
高橋:昔から親の影響でいろいろなものをいじくっていました。ただもの作りが好きという理由から当社に入社したというわけではありません。入社後は修行の毎日で、面白みを感じる余裕もありませんでした。誰よりもうまく作りたい、褒められたいという競争心で、もの作りに没頭しました。すると徐々に仕事で達成感という喜びが味わえるようになりました。

もの作りに対するこだわりなどございますか?
高橋:一言でいえば、「破壊と創造」でしょうか。私は、「改善」という言葉は単に機能を高める意味だと考えておりません。「改善」とは極限まで無駄を省き、新しい価値を最大限付加することだと考えています。ですから、既成の技術やシステムは「壊してやる」という気持ちで取り組んでいます。そこから新しいものを作り、思い描いていた成果が現れたときの達成感が、私にとって仕事をする上で欠かせない動機になっています。

船橋電子の深絞り加工製品の金型を初めて手がけた時のエピソードを教えてください。
高橋:船橋電子の深絞り技術を継承し発展させていくには、親会社の人間としてではなく、仲間として苦楽を共にしなければならない、と考えました。そこで私は船橋電子の社員と同じユニフォームを着て、共に油まみれになりながらその技術を学びました。深絞り技術はとても奥が深く、素材にかかるストレスや肉厚の変化に気を配り、機械では判別できない誤差を指先の感覚で調整するなど、まるで生き物を扱うような難しさがあります。先日、当社移管後、最初の製品が生産開始されたのですが、非常に苦労しました。寝る間も惜しんで検証を繰り返した結果、やっと最終的に当社の金型技術と船橋電子の加工技術を複合させることが出来ました。今後、この技術が当社に根付けば、世界中どこでもこの技術を活かした製品を提供できるようになり、企業価値を高めてくれるものと考えます。

最後に高橋さんにとって「匠の技術者」とはどんな人のことですか?
高橋:私自身は匠であるという意識はありません。終わりなき技術の向上をめざし、新しいものを生み出す人、それが匠だと思います。

鬼山さん、石橋さん