株主・投資家の皆様へ

代表取締役会長兼社長 柴野 恒雄


 株主・投資家の皆様には、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。第68期第2四半期のご報告をお届けするにあたり、状況報告に関しては以下のインタビューに代えさせていただきますので、ご一読いただければ幸いと存じます。

売上、利益ともに上期の公表計画を達成しましたが、何が要因だったと考えられますか?

 第一化成ホールディングス株式会社売却により前年同四半期比では大幅な減収減益となりましたが、予定通りの業績を達成できたのは、社員全員が目標に向かってがんばってくれたおかげだと思います。また、自動車向け、医療向けが好調だったことも要因です。一方、日本は円安の中で、国内生産回帰を期待しておりましたが、OA向けが減少するなど厳しい状況が続いております。

注力している自動車分野について、市場や注力製品の状況を教えてください

 中国景気の影響もあり自動車市場全体が非常に厳しい時期に入りました。そんな中でも当社は日系や欧米系に加え、中国ローカルメーカー向けも販路を拡大しております。また、耐熱性・強度が向上したプラスチック材の登場等により、従来金属だった自動車部品のプラスチック化が加速しており、当社の戦略商品であるインサートカラー(プラスチックの締結部補強部品)の受注が急増しております。更に、自動車向けの精密ばねは高耐久が求められ、研削や内面取りなどの二次加工が必要なことから、それらの設備を備えた埼玉工場によって、益々差別化できる状況になると期待しています。

医療、インフラやロックワンなどの規格品にも注力されておりますが、何か進展はございましたでしょうか?

 医療は、英国の特定顧客向けが中心ですが、当社部品採用の喘息吸入薬キットの販売数が、簡易治療薬市場の拡大を背景に増加しております。同市場は、中国・南米等新興国の購入層増加により長期的に拡大すると見られておりますので、当社に安定的な収益をもたらすと期待しています。また、最近国内でも大きな医療向けの受注が決定いたしました。インフラ分野で期待しているロックワンは、公共事業で採用されるためには都道府県の認定が必要になるなど拡大にはもう暫く時間がかかりますが、海外のビル向けや鉄道向けは受注が確定しました。ロックワンは、宇宙ステーションにも使用できるので、夢のある製品としても期待しております。

埼玉工場が竣工いたしましたが、現在の状況と、今後の計画をお聞かせください

 11月2日に竣工いたしました。12月に試験用サンプルを作成し、翌年3月から来年夏頃にかけて徐々に稼動いたします。埼玉工場の従業員は既に15名ほど採用済みで、新潟工場のメンバーと協力しながら立ち上げます。同工場は「スマートファクトリー」をコンセプトとしており、材料投入から出荷までを自動化するなど極力人手をかけない構想です。このコンセプトの背景には昨今のアジアにおける賃金の高騰があります。一度、埼玉で「スマートファクトリー」のノウハウを確立させた後、順次海外工場にもこのコンセプトの導入を図り、賃金高騰に対応していきます。

深絞り加工の船橋電子を買収して1年半経ちましたが買収時の思惑と比べて状況はいかがでしょうか?

 思惑通りです。深絞り部品は直近では、自動車向けの少量の生産が始まりましたが、2017、2018年頃に開始する大きい受注も決まってきております。埼玉工場の第二期工事は2019年頃を予定しておりましたが、前倒しになるかもしれません。また、自動車だけではなく、機械部品や医療向けにも受注が決まっております。一方で、従来の主力製品であった携帯電話のアンテナはワンセグの視聴需要が減るなど、想定以上に引合いが縮小いたしました。

 先日、深絞り加工の最新のソフトウェアを導入したのですが、これを用いることで金型のシミュレーションが可能となり、工期が短縮されました。金型を何度も造り直すことが不要となるだけではなく、見積もりのスピード対応が出来るようになりましたので、お客様には喜んで頂けると思います。

今期から社外役員を3名選任しておりますが、効果を実感することはありますか?

 社外取締役の尾関氏、米倉氏、社外監査役の宿輪氏の3名が今期から就任しておりますが、3名とも頻繁に海外を飛び回り、実地検分を重視される方たちですので、特に海外戦略に関しては具体的で貴重な意見をしてくれます。また、当社の製品・戦略等に対しても忌憚の無い質問や意見を頂き、それが触媒となり議論が深まるなど、取締役会の活性化に貢献していると感じます。

中期経営計画の拠点戦略に変更はありますか?

 今期は、予定していたドイツのシュトゥットガルトとインドのプネに加え中国の天津にも営業所を開設します。また、メキシコのメキシコシティ近郊のケレタロに工場を開設します。その殆どは自動車需要を狙ったものです。メキシコは既に多くの自動車メーカーと1次サプライヤーが進出していますが当社のような2次サプライヤーは少ないので早めに進出し需要の囲い込みを狙っていきます。
 来期以降では、チェコ工場開設を予定しております。チェコ人は忍耐強く従順であるなど日本人と似ているところがあり、戦前は工業国で技術水準も高いので、欧州の生産拠点としては最適と考えております。一方、ブラジルも計画しておりましたが、思っていたほどインフラ整備が進まず、お客様もまだ検討の段階ですので慎重に考えております。また、M&Aによる海外工場買収も視野に入れております。

バランスシートについてはどのような方針でしょうか?

 2020年にnet有利子負債をゼロにする計画でしたが、財務体質改善により以前に比べ金利が下がり資金調達が容易になっておりますので、投資を優先することも検討しております。その場合、net有利子負債は横ばいで推移すると考えています。

業績推移